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ラストでは冒頭より良い状態になっているか

どん底では冒頭より悪い状態になっているか
で書いたことと同じように、ラストでは序盤よりもいい状態になっていないといけません。

何か困難が訪れて、それを解決し、元通りの生活に戻った、ではダメなのです。

冒頭で何か苦悩を抱えている状態からスタートするのなら、それが解決されて終わり。
逆に冒頭で何の苦悩も抱えていない状態からスタートするのであれば、最後には元通り以上の状態になっていなければなりません。

主人公は物語の途中で様々な試練に直面します。何かしらのトラブルが起こったり、人生がうまくいかなかったりです。そしてそれを乗り越える時、主人公は内面的な成長を経験しており、その成長があったおかげで、ラストでは冒頭よりも良い状態になっている。

もちろんこれは基本的にハッピーエンドで終わる場合の話なので、ホラー映画などではこの限りではありません。

どん底では冒頭より悪い状態になっているか

人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の著者による『荒木飛呂彦の漫画術』という本の中で紹介されている、脚本の黄金曲線があります。

横軸が時系列、縦軸が主人公の状態の良し悪しを表しています。

とてもシンプルでわかりやすく、

      1. 最初は0の状態。
      2. 物語序盤で昇る。
      3. どん底に落ちる。
      4. 最後に極限まで昇る。

を表しています。アクションも、サスペンスも、恋愛ものも、あらゆる物語には抑揚があり、そのどれもが多くの場合このような曲線をなぞっていると言っても過言ではありません。

さて、ここでのポイントの一つは、「どん底では冒頭よりも悪い状態になっている」ことです。

例えば恋愛ものなら、

      1. 恋愛に興味がない。
      2. 恋が芽生える。
      3. 振られて大打撃。
      4. 実ってハッピーエンド。

となり、「3. 振られて大打撃」では『こんなことなら恋愛なんかするんじゃなかった』とさえ思うほどのショックを受けています。つまり「1. 恋愛に興味がない」ときの方がマシ、ということです。

これが、もし序盤の0以下になれなければ途端につまらなくなります。

例えば「昔一回告白してダメだった相手にもう一度告ってもやっぱりダメだった」とか。これは全く面白くないですね。最初の良くない状態に戻っただけです。

どん底では徹底的に落とす。想像しうる最も最悪の状態を目指すくらいがちょうどいいのです。

参考図書: 荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)
http://amzn.asia/gsTCNoz

開始 5 分で掴みの笑いはとれているか

私たちがやるのはコメディです、ということを開始 5 分以内に伝える必要があると考えています。「一番最初に笑いをとるシーン」というのはとても慎 重にやるべきです。まだ温まっていない空間で最初に「これは笑っていい舞台です」とお客さんに伝える任務があるからです。

それはできるだけ早い方 がよい。お客さんは「面白いから笑う」のではなく、「笑っていい」とわかっているから笑うのです。その土台づくり、空気づくりは一つ一つのネタ以上に大切といえます。

また、掴みの笑いをする上で気をつけなければならないのは「お客さんはそのキャラを知らない」という前提です。基本的に人は「赤の他人に対して距離を置こうとする」ので、「笑ってたまるか」という姿勢で見ている、ぐらいに思っておいたほうがよい。その状態でも笑ってもらえるものを用意しなければならなりません。

開始 10 分で「どんな話か」わかるか

上演開始 10 分でお客さんに「どんな話か」の大筋を伝えられるようにします。

例えば探偵ものであれば、「この事件の犯人を見つけて終わりだな」とか、救出劇であれば「あの人をあの場所から救い出して終わりだな」など。

基本的に人は「終わりの見えない話を聞かされる」のは苦痛です。もし「登場人物たちは何をしたいのか」「何をすればこの舞台は終わるのか」のゴールが見えないままだと、お客さんはそれを探しながら見ることになり、不要な観賞エネルギーを消耗してしまいます。

できるだけ早く「どんな話か」をお客さんに伝えることができれば、それ以降は楽に、安心して舞台を見てもらえることになるのです。とにかく「わか
りやすい話」を重視しているアホロではなおさらです。

死ぬほどシンプルにできているか

脚本を書いていると、ついつい複雑にしすぎてしまいます。作っている本人は伝えられているつもりでもお客さんはわかってくれません。お客さんはびっくりするほど、ぼーっと舞台を見ています。ぼーっとさせる原因は脚本や演出や役者など色々考えられますが、とにかくぼーっと見始めたらもうセリフは頭に入ってきません。これはあなたのお友達や、その団体のファンのお客さんが舞台を見に来た場合でも全く同じです。ファンでさえ、そんなもんです。お客さんの集中力はそうはもちません。

よく考えてみて下さい。最近見た映画のセリフどれだけ、一字一句正確に思い出せますか?名シーンのひと言二言が限界ですよね。「だいたいこういうことを言った」は思い出せてもセリフは正確には覚えていません。なんなら、シーンの順番なんか全然思い出せません。

「お客さんはセリフなんて半分以上聞き流している」と心得ましょう。アンケートで「主人公の職業が何なのかわからなかった」と書かれているが、脚本上セリフでバッチリ言っているのに、ということは平気で起こります。

舞台は映像と違って見返すことはできないし、ほとんどのお客さんは舞台を一度しか見ないので、1回見れば100%理解できるようにわかりやすくしましょう。

例えば『ウソつきは夢の始まり』は最初、ガンボーを誘拐したのはトムさん、、と思いかけての実はアイツ!という、ミスリーディング(犯人じゃない人を犯人ぽく描くこと)をしていたのですが、これのせいで話がわかりにくくなっていると判断し、ごっそり削りました。結果、かなりわかりやすくなってしまいましたが、このお話はミステリーではないのでこれでいいと判断しました。

わかりにくいと言われるくらいなら、わかりやすすぎると言われた方がずっとましだと思います。