飛行機と神様

飛行機と神様について。

人間の脳とは不思議なものです。何がどう不思議かって、時々ぼくたちは信じられないほどバカな失敗をするものです。ぼくだけではありません。人間誰しも、そういうことはあるのです。みんなきっとそうです。

ぼくはちょっと前までカナダにいたのですが、そこから日本に帰るときに信じられないミスを犯しました。飛行機に乗る日を間違えたのです。

僕は移動という行為を好まず、時間があれば死ぬまでにどこでもドアを作ろうと思っているのですが、これが重たいスーツケースを持って1時間強バスや電車に揺られて空港まで行くとなるといつもの比ではありません。国を変えるワープゲートを通るんだ、仕方がない、とは思いつつも、あの苦痛はなかなか慣れません。ストレスと戦いながらやっと空港につき、長い列を並び、お姉さんにパスポートを見せ、さあやっとスーツケースを手放せるぞと思った矢先、お姉さんがぼくの世界をひっくり返しました。

「今日じゃないね〜(英語)」

は?何を言っているんだお姉さん。

「ホラこれ見て。今日じゃなくて明日だよ。明日の、同じ時間にまた来てね。(英語)」

愕然としているぼくを見てお姉さんは言った。

「昨日じゃなくてよかったじゃない!」

いやまあそうだよね。その通りだ。

結局、感動のお別れを言ったホストファミリーの家に舞い戻ってもう一泊泊めてもらうという恥ずかしいことこの上ないミッションを遂行する他なかった。ありがたいことに笑って泊めてくれた。

どうしてこんなミスをしてしまったのか必死に考えた。飛行機の予約をパソコンの画面上でするとき、何度も画面を確認した。飛行機の予約だもの。そりゃ確認した。14日発、15日着!おっけ!と思ってポチった。すぐにカレンダーアプリにメモった。14日発、15日着、そしてそれぞれの発着時刻もメモった。

そして空港に来てお姉さんにパスポートを見せた途端、予約していた日が変わった。14日発が15日発に、15日着が16日着に変わった。もう心底、日を間違えていないと確信していたので、あのお姉さんの手によって瞬時に航空会社の管理システムがバグを起こして不当に書き換えられたのだとしか思えなかった。感覚として。

しかし敗因はあった。予約ポッチンのときに、予約内容を声に出して朗読しなかったことが最大の敗因な気がする。いつもはブツブツ何度も繰り返してからポッチンする。それをしなかった。もっと言うと、第三者に確認してもらえば尚よかった。予約画面をスクショして友達に送って「これ、14日発15日着だよね!?」という質問を投げつけ、「見りゃわかんじゃん!頭いったか!?」と思われるだけの迷惑行為を行うべきだったか。とにかく本当に間違え方が手遅れの方ではなく気が早い方でよかった。

ところでさっきした、お姉さんの手によって不当に書き換えられたのではないか、という妄想はなかなか面白かった。もっと考えよう。

妄想はこうだ。この世には全知全能の神様がいる。この人にかかれば時間操作とかも因果律への反逆もチョチョイのチョイだ。

ぼくが14日発のつもりで飛行機を予約した。神様はぼくが予約画面のスクショを撮っていないことを「いいことに」(←このニュアンス大事!)、ぼくが15日発の便を予約「していたことにした」のだ(←ここもニュアンス大事!)。

わかる!?この感じわかる!?神様はぼくが空港についてから、ぼくの予約状況を書き換えたのだ。元から僕が間違っていたのではない。お姉さんのとこまで行列を耐え忍んだ後あの瞬間、全てを書き換えてしまったのだ。航空会社の予約データベースも、ぼくのスマホに届いている予約確認メールの内容も、全て書き換えてしまったのだ。

予約完了してから空港に着くまでの間に、予約画面をスクショして第三者に送っていないので今となっては証人もいない。ぼくがどれだけ「あのときは確かに予約画面に14日発15日着と書いてあったんだ!」と言い張っても、神様は「ぼーっとしてただけじゃない?」と素知らぬふりをするのだ。なんて野郎だ!

人の記憶というのは曖昧なものだ。「あれ!!?いや、いやいや絶対こうだったって!」と思っても「現にこうじゃなかったじゃないか!」と言われて「あっれえェ〜?おっかしいなあ〜・・でも確かに・・うーん」というようなシチュエーションは過去に何度か経験したことがある。ぼくだけでなく他の人たちもそうであるように。あれは全部神様のせいなのだ。ぼくがパスポートをお姉さんに見せるまでは確かに全世界的に「14日発15日着だった」んだけど、あの瞬間に直ちに全世界的に「15日発16日だったことにされた」のだ。(←ニュアンス最高!)

神様はなんでそんなことするのか。それは神のみぞ知ることなのだ。